今回の新種目として、アメリカ発のヒップホップ文化であるブレイキンが注目されている。
2018 年にブエノスアイレスで開催されたユース オリンピック競技大会での成功によってこの種目がパリ五輪に追加された。
他の理由は、近年オリンピックへの関心が薄い、若い世代を呼び込むためだ。
但し、このパリ五輪で大衆に受け入れられなたった場合、次の五輪の競技で再びブレイキンが見られるかどうかは確実ではない。今回は見逃せない貴重なチャンスと言える。
未だあまり知られていないブレイキン、パリ五輪で楽しく観戦するために色々と調べてみた。
2024年パリ五輪の新種目ブレイキンとは?
ブレイキンの歴史
ギャング達の抗争が絶えずニューヨークの治安悪化を震撼させていた1970年代初頭、黒人たちはブロックパーティと呼ばれる路上で音楽と歌とダンスを楽しむイベントをしていた。そこで人気だったのがDJがクール・ハークだ。
当時はターンテーブル1つでプレイすることが主流だったが、彼は2つのターンテーブルを巧みに操り音が途切れないように演奏。すると観客が熱狂し自然発生的にダンスバトルが始まった。
このダンスバトルは、次第にニューヨークの若者たちのポジティブなはけ口となっていき、ムーブメントとなって広まっていく。
一般的にはブレイクダンスとしてよく知られるが、ブレイキンが正式名称
ブレイキンが一躍世界中に広まったのは、1983 年の映画「フラッシュダンス」
短いシーンだがブレイキン風景が披露されている。
B-boy,B-girlとは?
DJクール・ハークの演奏が「Break Beats」と名付けられ、ブロックパーティで踊る若者をB-boy、B-girlと呼ぶように。
簡単に言うと、ブレイクダンスを踊る少年少女という意味だ。
パリ五輪に出場する選手達(ダンサー)もB-boy、B-girlと呼ばれている。
ブレイキンダンスの特徴
非常にアクロバティックな動きで、体操、武道なども取り入れられている。
ブレイクダンス初心者に基本の「ウィンドミル」(両足を開き、回転させその遠心力を利用して回転)や、「トップロック」(インディアンステップという立ち踊り)などがある。
ブレイクダンスと言えば、頭で回るダンスにクローズアップしがちだが、色々な技が創造されている。
自由度が高い分、即興力、集中力、判断力が問われるかなり高度なダンスの一つ。
2024年パリ五輪の新種目ブレイキンのルールとは?
ブレイキンはバトル形式で行われ、ダンサーが1人づつムーブ(動き)を交互に披露。
個人戦とチーム戦があるが、チーム戦でも、1人がムーブする間は他のダンサーは邪魔をしないように離れなければいけない。
ステージ上には音楽を流すDJと進行のMC、そしてB-boy、B-girl達だ。
ダンサー達はダンスバトル当日に初めて曲を聞くことになる。そう、事前には知らされていない。
複雑なフットワーク、ツイスト、スピン、手や頭でバランスを保つ「フリーズ」など、さまざまな動きを本番当日舞台の上で即興で披露するのだ。
審査員は3〜5人(引き分けを回避するため奇数)。
審査は審判員の主観で決まることのないように下記のように審査基準が定められている。
2024年パリ5輪ブレイキンのルール
- 技術(難易度・迫力・速度)【40点満点】
- 表現(雰囲気・情熱・個性・音楽性・独創性)【30点満点】
- 構成・完成度(想像力・多様性・見やすさ自然さ・形・バランス)【20点満点】
- バトル(意思疎通・自然さ・戦術)【10点満点】
新体操のように予め曲が決まっているスポーツとは異なり、その場で音楽を流すDJと進行のMCがいるのが特徴で、100%即興というのが面白い。
審査基準がかなり細やかに分かれているので、芸術性を問われる競技と言えよう。
パリ五輪出場資格
2008年12月31日以前に生まれた選手のみがパリ五輪の出場権を得ることができる。
男女16名ずつ、合計32名の選手が出場するが、2024年5月2日現時点では未だ全ての出場者は決まっておらず、
2024年5月(上海)と6月(ブダペスト)に行われる五輪予選シリーズの成績により新たに男女各7名が出場権を獲得することになっている。
パリ五輪で注目したいB-boy
半井 重幸 なからい しげゆき
半井 重幸 なからい しげゆき、ダンサーネーム:Shigekix(シゲキックス)
生年月日:2002年3月11日 出身:大阪府大阪狭山市 身長:166㎝ 体重:56㎏
7歳の時、姉で同じくブレイクダンサーの半井彩弥(AYANE)に影響を受けてダンスを始める。
2018年ブエノスアイレスでのユースオリンピックで銅メダル、その後2020年、2022年、2023年と日本選手権3連覇を遂げている。
2023年 「WDSF 国際競技大会 Breaking for gold World Series in PORTO(ポルトガル)」男子ブレイキンで金メダル獲得
Danis Civil ダニス・シビル
Danis Civil ダニス・シビル ダンサーネーム:B-Boy Dany
生年月日:1988 年 5 月 3 日、出身:ガイアナ(フランス領)現在はフランス国籍 ブレイクダンサー
ダニス・シビルは 15 歳のときに従兄の影響でガイアナ(フランス領)のブレイクダンスを始める。
20歳でフランスへ移住し、その後ダンスチームを作りすぐに名声を得ている。
2020 年には、彼は看護助手の資格を取得
2023 年ヨーロッパ競技大会で金メダル獲得し、パリ五輪出場資格を獲得
Victor Montalvo ヴィクター・モンタルヴォ
Victor Montalvo ヴィクター・モンタルヴォ ダンサーネーム:B-boy Victor
生年月日:1994 年 5 月 1 日 出身:アメリカ
メキシコ出身の父親であるビクター・ベルムデスと叔父のヘクターは、双子のブレイクダンサーだった。
6 歳のときに初めて父と叔父からブレイキングを教えてもらう。
ブレイキンで名声を得たかった父親の夢を今は息子が引き継いで突き進んでいる。
2021年フランス・パリで開催されたWDSF(世界ダンススポーツ連盟)ワールドブレイキングチャンピオンシップで金メダルを獲得。
パリ五輪で注目したいB-girl
湯浅 亜実 ゆあさ あみ
湯浅 亜実 ゆあさ あみ ダンサーネーム:B-Girl Ami
生年月日: 1998年12月11日 、出身:埼玉県 駒澤大学文学部英米文学科卒業 趣味:裁縫
小学1年生の時に、4つ上の姉Ayuの影響でヒップホップを習い始め、5年生の時にブレイキンを始める。
床に背中をつけながら両足を回転させる大技「ウインドミル(風車)」を身につけたいと思ったことがキッカケだったとしている。
世界大会Red Bull BC One2018およびWDSF世界ブレイキン選手権2019・2022優勝者。
Dominika Banevič ドミニカ・ベネビッチ
Dominika Banevič ドミニカ・ベネビッチ ダンサーネーム:B-Girl Nicka
生年月日: 2007年6月 8日 出身:リトアニア ブレイクダンサー
5歳のときにYouTubeでブレイキンと出会った。
すぐにその魅力に取り憑かれた彼女は母親を説得してレッスンに通い始めると、8歳から指導者の下で正式にブレイキンを学び始め、基礎とスタイルの重要性を教わっている。
16 歳で、彼女は 2023 年の2023 WDSF ヨーロッパ ブレイキン チャンピオンシップで金メダル獲得
Sunny Choi サニー・チョイ
Sunny Choi サニー・チョイ ダンサーネーム:B-girl Sunny
生年月日:1988 年 11月 10日 出身:アメリカ
両親は韓国の大邱からアメリカのテネシー大学の数学と高分子工学の博士課程候補者として移住
サニーさん幼少の頃は、体操選手として活躍していた。
高校1年生の放課後、キャンパス内でブレイキンを踊る学生を見かけ一気に虜に。
その後大学を卒業しエスティ ローダーに入社、フルタイムで勤務しながらブレイキンの活動を続けていた努力家。2023 年 1 月にブレイキンに専念するために退職した。
2023年パンアメリカン大会で金メダル獲得
まとめ
ブレイキンは普通のダンス競技とは似て非なるもの、100%即興性が問われる珍しい競技です。
二度と同じ舞台を味わうことは出来ません、ジャズのセッションのようなものです。
ダンサーは、いかにその瞬間を楽しみ独創性を発揮できるかが鍵となります。
個人的には、日本人はどちらかと言うと即興は苦手な分野かなと思っていたが、日本は、フランス、アメリカ、と並んでブレイキンの先進国の一つとなっています。あっぱれです。
ヒップホップ文化が根底にあるので若者向けのスポーツであることは確かですが、珍しいスポーツを観戦し新しい世界を知る、これこそがオリンピックの醍醐味でもあります。
新競技のブレイキンがパリ五輪で更に世界中に広がり競技人口が増える事、間違いなさそうです。
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